今週のお題
今年もまぁ、それなりに本を読んでので、自分の読書行為の一つの振り返りとして、今年読んだ本で面白かった本をあげてみたいと思います。はてなの今週のお題も「私の2009年ふりかえり」なのでちょうどいい。まぁ、ベスト本なんて言っても一冊なんて決められないから、たくさん紹介しちゃいます(6冊)。では、2009年ベスト本いってみましょう( ´∀`)
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村上龍 『愛と幻想のファシズム』
村上 龍 / 講談社 ( 1990-08 ) / |
村上龍キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
前から、村上龍のその小説の強さに圧倒されながらも、どことなく好きになれない感じでしたが、とうとうキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!という感じ。1990年、世界恐慌が始まり、日本は危機的な状況に立たされる。そんな混乱した中でカリスマ鈴原冬二が率いるファシズム的な思想を持つ政治結社「狩猟者」が頭角を現し、日本の支配を目指す。めまいがするくらいに愛と幻想を感じる強い小説。
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ジェフリー・アーチャー 『ケインとアベル』
ジェフリー アーチャー / 新潮社 ( 1981-05 ) / |
まさかこんなに面白いとは思ってみなかった!!
前々から、面白いという噂は聞いていたが、こんなに面白いとは……。ポーランドの片田舎では、私生児として生れたヴワデクが生まれ、ボストンの名門ケイン家ではウィリアムが生まれる。時同じく1906年。二人は、ホテル王・銀行家となり、互いの運命を重ねていく。この二人の皮肉な出会いに待ち受けるものとはー。作者のストーリー展開、場面描写、ラストのオチに脱帽。小説を夢中で読みたいなら、これを読めばいい。本当にオススメ。
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池澤夏樹 『スティル・ライフ』
池澤 夏樹 / 中央公論社 ( 1991-12 ) / |
ただただ好みの小説
胸キュン小説っていうんですか?…いや、違うだろ。とにかく、「何が面白いかわからないけど、ただただ好みだ」っていう小説ってありませんか?例えば、それは私の場合村上春樹の短編なんかそれなんですが、池澤夏樹もその部類みたいです。「ぼく」の前に突然現われる佐々井。彼の宇宙や微粒子の話に熱中した「ぼく」の目には世界が違って見えてくるー。まぁ、筋だけ言うと、その佐々井と一緒に株でビジネスをするとかそんな話なんですが。そんな話の筋なんてどうでもいいさ。そこに書かれている言葉の一つ一つがじわぁと心にしみこんでくる。
でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄命の世界を創造してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
大事なのは、山脈や人や、染色工場やセミ時雨などからなる外の世界と君の中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
たとえば星を見るとかして。
というか、シビれるね。
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高村薫 『太陽を曳く馬』
高村 薫 / 新潮社 ( 2009-07 ) / |
脳みそをフル回転させてくれた小説(その後ショートしました)。
この年、一番いろんなことを考えさせられた小説。今年、私の好きな作家が二人(村上春樹、高村薫)が新作を出しており、その両方がオウム真理教をモチーフとした作品を書いているという偶然性は、なんだ「か感慨深い。私としては、村上春樹の『1Q84』よりこっちの方がヒット。好きな作家には、それぞれにいろんなものを求めているんだろうけど、今回の『1Q84』はなんか違うなぁという感じ。私の波長と合わない。これは『海辺のカフカ』の時にも感じていて、春樹の文体がすきだから楽しめただけかなという感じ。ちなみに私が好きな春樹の作品は『世界の終わりと~』とか『スプートニク~』とか『ダンス・ダンス~』とかそっち系(どっち系だ)。話が村上春樹の方へずれていますが、軌道修正して、ここらで『太陽を曳く馬』のあらすじを。
福澤彰之の息子・秋道は画家になっていた。夢中で絵を描くために「うるさい音を消したかった。」と、同居人と隣人を玄翁で撲殺する。凄惨極まる現場に残されたのは、部屋中の壁を赤く塗った秋道の作品。一方、曹洞宗・永劫寺のサンガでてんかん症の僧・末永和哉が座禅の行中にさまよい歩き轢死するという事件を、合田雄一郎は部下の吉岡と捜査する。このサンガは赤坂の一等地にあり、もともとの代表者は福澤彰之である。今では死刑囚となった秋道に手紙を送る日々が続く彰之、尋問に答えにならないような答えを出す僧たち、事件を自分たちの処理しやすいように動く警察内部・司法機関、彼らを通して雄一郎が見たもの…言語理解の飽和状態、他者の排除。事件を通し、世界を見た雄一郎は立ちすくむ。
高村女史、完全にパワーアップしてますね。観念的な言葉があふれていて、現代美術も仏教も私には分からないので完全にショートさせられました(゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ人物描写もすごい、特に秋道。完全に言葉が届かない”他者”を作り出している。高村薫の福澤シリーズ、または合田シリーズを読んで福澤彰之や合田雄一郎のその後が気になる人、村上春樹『1Q84』を読んでもう一度このオウム後の世界について考えたい人は、これを読めばいい。そして、ショートしてください。
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クラーク 『幼年期の終わり』
クラーク / 光文社 ( 2007-11-08 ) / |
「もう、今年は面白い小説は出てこないな」と思った年末に滑り込んできた
地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は、平和で理想的な社会をもたらした。しかし、彼らの最終目的はそこから始まるーー。前から面白いという評判は聞いていたが、本当に面白いなぁ。哲学SF小説という言葉が本当に合う。読んだ人ならわかると思うけど、ラストの人類の姿には少々寒気がしませんか。年末することがないなら、これを読んで人類世界について考えてみては?
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くすのき しげのり 『おこだでませんように』
くすのき しげのり / 小学館 ( 2008-06 ) / |
今年、唯一、涙を流して読んだ本。
絵本です。小学生の読書感想文コンクールの課題図書か何かで、何の気ナシに読んでみたら、涙を流してしまった。いつも怒られる男の子のお話。なんでこんなに辛くなるんだろう。きっとよく怒られて泣いてたからだ(いや、未だに怒られるけど)。今、よく怒られて辛い思いをしているあなた、昔よく怒られたあなた、親や教師をしているあなた、ぜひ読んで見てください。
以上、フィクションばかりでしたが、ノンフィクションであげるならあげるなら、
佐藤 学 『学力を問い直す―学びのカリキュラムへ』、
佐藤 学 / 岩波書店 ( 2001-10 ) / |
松岡 正剛『本の「マッピング」という極意 : 多読術 』
松岡 正剛 / 筑摩書房 ( 2009-04-08 ) / |
というところかな。
2009年、作家の話だけでいくと、前述にあるように、好きな作家が新作それも長編を出してウハウハな年であった。また、なかなか好きになれなかった作家が好きになれたことは、良かったなぁ。先に書いた村上龍しかり、あと伊坂 幸太郎も。まだピンと来ない部分もあるけれど、『陽気なギャング~』とか『チルドレン』などのユーモア小説はかなりヒットしました。来年もいろんな小説家を開拓していく予定。
伊坂 幸太郎 / 祥伝社 ( 2006-02 ) / |
あと、話題になっていたり、人に勧められたりして前々から読みたかった本をたくさん読んだ年でした。評判通りってものもあったし、期待を裏切られた本もあったり……けれど、話題になったり、人に勧められた本っていうのは、なぜ話題になるのかとか、あの人がこの本を薦めるのかなんてところまで考えられるので結構楽しい。来年はもっと面白い・深い本が読みたいなぁ!何かオススメがあったら紹介してください。
以上、他のサイトさんの2009年の面白かった本のまとめなんかをチェックしながら、(年賀状も書かずに)来年の読書ライフに思いをはせるkonnoeがお伝えしました。